【新橋「やきとん まこちゃん本店」】昭和の賑わいが残る、絶品タレのやきとん

酒場をめぐる

良くも悪くも、昭和の時代ってすごかったなと思う。戦争で何もかもを失い、世界でも最貧国のひとつだった日本が、ほんの数十年で世界トップクラスの経済大国に登りつめたのだから。その裏には、先人たちの計り知れない血と汗と涙があったことは想像に難くないだろう。

そんな激動の昭和時代から、多くの企業が集まる新橋で多くの企業戦士たちを癒やしてきたであろうやきとんの名店が「まこちゃん」である。創業時から継ぎ足されてきた絶品のタレをまとうやきとんを求めて、今でも多くの人が集まり賑いを生み出している。綺麗でもおしゃれでもない、雑多を極めたその光景はまさに「令和に生き続ける昭和の賑わい」と呼んでいいだろう。

新橋で半世紀以上にわたって愛される「やきとん まこちゃん」

「やきとん まこちゃん」は、1968年に東京・JR目黒駅前で創業。当初は6席のカウンターと2つの小さなテーブル席からはじまったそうだが、その後1972年に新橋へ移転、現在では新橋に3店舗、中目黒や大井町にも支店を展開している。たっぷりと後述するが創業以来、毎日継ぎ足して作られる「秘伝のタレ」を使用したやきとんが看板メニューであり、特級焼き師と呼ばれる職人が絶妙な火加減で焼き上げている。半世紀以上にわたり、サラリーマンの聖地である新橋で多くの人々に愛され続けている老舗のやきとん店だ。

秘伝のたれで食べるやきとん、サイドメニューも充実

この日は仕事仲間と新橋呑み。しかも一次会で焼肉を堪能し、みんなほどよく上機嫌になったところで「まこちゃん、入れるかな…」とダメモトで足を向けてみたのだった。焼肉のあとにやきとんというバツの悪さであるが、いざ、まこちゃん本店をのぞいてみると、どうやら入れそうとのこと。この店の存在はかなり前から知っていたのだが、いつも超満員で賑わっていたため、なかなかその敷居をまたぐことは叶わなかった。でも今日は行ける!素直な喜びが湧き上がってきた。いそいそと着席し、メニューを広げる。


やはりメニューのもっとも目立つ場所に、たれ焼きについて大きく記載されている。ここまで書かれて、たれ焼きを食べないわけにはいかないだろう。塩でも焼いてくれるそうだが、またいつかのお楽しみということで。
やきとんに次ぐ店の看板メニューとして挙げられるバリエーション豊かな煮込みや、刺し、早出、野菜系など、やきとん以外にどう組み立てるべきか迷ってしまいそうなのである。

ドリンクも大衆酒場の王道とも言うべきラインナップ。これだけ揃っているならば、お酒が呑める人全員を受け入れてくれそうである。

名物のやきとんを中心に、バリエーション豊かなおつまみを楽しむ


憧れだったまこちゃんにようやく足を踏み入れ、はやる気持ちをおさえながら早速瓶ビールをオーダーする。これまた嬉しいことにサッポロラガー、赤星なんである。この時点でもう、私にとってのお気に入りの酒場になってしまった。いつも以上に美味しく感じられる赤星、心がさらに高揚していく。


人数が多いということは、ひとり呑みの時よりもたくさんのおつまみが味わえるということ。これはこれで嬉しいものだ。やきとんに次ぐ看板メニューのもつ煮込は、牛シロ(牛の小腸)が使われており、じっくり煮込まれてトロトロの食感が舌に優しい。濃厚でコク深い味わいも癖になりそうだ。



刺しメニューのコブクロ刺は、こりこりとした食感が楽しい。見た目からも味からも、新鮮で良い食材が使用されているのがわかるようだ。そして早出しメニューのポテトサラダにセロリの浅漬けも酒のアクセントとして心地よい。多くの酒場で楽しめるメニューもしっかりと作られている。


そしてついにやってきた、秘伝のたれで焼かれたやきとんである。人数を考慮して7本の盛り合わせをチョイスしている。記憶が定かではないが、おそらくメニュー表に並ぶやきとんの全7種類(シロ、レバ、タン、ハツ、ハラミ、ナンコツ、コブクロ)が1本ずつ盛られているのではないだろうか。

毎日継ぎ足しで作られているという秘伝のタレで焼かれたやきとんは、見た目のインパクトも強力である。豚の旨味が良く引き出され、ジューシーで香ばしい仕上がり。一串145円というリーズナブルな価格設定も相まって、これは東京都内でも最高峰のやきとんと言えるのではないだろうか。うまいっす。

昭和の活気と勢いが今の世に。ここで呑むことの特別感たるや。


店内に目を向けると、小さなテーブルに肩を寄せ合って大勢の人がお酒とやきとんを楽しんでいる。この光景はきっと、昭和の創業時から変わることなく、連綿と受け継がれてきたのだろうと想像できる(当時はたばこの煙でもくもくだったのかもしれないけど)。この雑多な賑わいのなかで呑むお酒は、それだけで美味しさのレベルがひとつもふたつも上がるような気がした。綺麗な店もおしゃれな店もいいけれど、ある程度の歳になると、むしろこういうのがむしろ落ち着くんだよなと思ったりもする。願わくばこのままで、いつまでもこの風景と味を守り続けてほしい。そして事あるごとに、まこちゃんを訪れようと肝に銘じたのだった。

店名/新橋やきとん まこちゃん本店
住所/東京都港区新橋3-18-7 桃山ビル 1F
電話/03-3431-5700
営業時間/月・火・水・木・金16:00 – 23:00/土15:00 – 23:00/日・祝日15:00 – 22:30
定休日/不定休

※本記事は筆者訪問日(2024年10月)時点の情報をもとに作成しています。
※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があります。
※飲酒は20歳になってから。お酒は楽しく適量で。