住宅街の小さな蕎麦屋にて

日々の酔い言

その夜は、音のない雨が続いていた。

住宅街の片隅で長年ひっそりと営業を続けてきた
小さな蕎麦屋の暖簾をくぐる。

先客はくたびれたスーツをまとった
50代後半と思しき男性のみ。
もりそばと丼もののセットに
瓶ビールを合わせている。

適当なテーブルに座り
瓶ビールとつまみをふたつ注文する。

ほどなく運ばれてきた一番搾りの瓶の脇には
カツ丼の隣にいつも座っていそうな漬物の小皿。

ビールをひとくち、小さなため息をつく。

小さな蕎麦屋の店内には、
音のない雨の音だけが
静かに響いていた。