【新宿「どすこい四文屋」】 焼きとんから刺身まで楽しめる万能酒場

酒場をめぐる

スペシャリストの時代と言われて久しい。あらゆる業務をそつなくこなすオールラウンダーよりも、自分の武器となる得意分野を持ち、その道を誰よりも極めた人物のほうが、社会的な評価が高いとされる。その流れは飲食店においても同様で、なんでも食べられるファミレスのような店よりも、ジャンルを絞った専門店のほうが人々の関心を集めやすい。まあ個人店でファミレスのような真似はできるはずもないのだけれど。

そんな時代の潮流はさておき、肉も魚もさまざまなおつまみが楽しめて、かつどのメニューも質が高いオールラウンダーな酒場があるとしたら、それはそれで重宝すると思わないだろうか。その日なにを食べるべきか決めかねている時でも、好みが分かれる複数の友人と呑む時でも、きっと大きな懐で受け止めてくれる。新宿駅東口のほど近く、昭和世代なら知らぬものはいない旧アルタ裏の「どすこい四文屋」である。

ちゃんこ鍋のように多彩な味が楽しめる「どすこい四文屋」


「どすこい四文屋」は、1998年に西武新宿線・新井薬師前駅で創業した「四文屋」グループの新業態として、2016年に開店した店舗。このブログでもこれまでに、新宿思い出横丁の四文屋や、中野の魚の四文屋を紹介してきた。四文屋は安価で旨い焼きとんや焼き鳥を提供する大衆酒場として都内に数多く展開してきたが「どすこい四文屋」はその中でも特に相撲をテーマに掲げた異色の存在だ。店内には力士の壁画が威風堂々と描かれ、名前の通り「どすこい」の掛け声にふさわしい豪快な雰囲気を漂わせている。料理構成は従来の串焼きにとどまらず、寿司・刺身・天ぷら・煮込みなどを取りそろえ、まさに“ちゃんこ鍋”のように多彩な味わいを一度に楽しめる点が最大の特徴。肉の旨味を堪能できる焼きとんや大ぶりの唐揚げに加え、新鮮な魚介の刺身や寿司も味わえるため、肉派も魚派も満足できるのが魅力だ。特に名物の巨大焼きおにぎりは迫力満点で、訪れる客の目を引く一品として人気を集めている。新宿駅から徒歩1分という好立地も相まって、気軽に立ち寄れる大衆居酒屋として、若者からベテランの酒場好きまで幅広い支持を得ている。

力士の壁画が醸す異世界感、真夏の昼の宴を楽しんでいく


真夏の休日の昼下がり、命の危険を感じるほどの暑さのなか、新宿をうろうろと歩き回り必要なものを買い漁っていた私に、いよいよ限界の時が訪れた。暑すぎる、このまま歩き続けたらやばいかもしれない、どこか涼しいところで休憩しよう。ということで手頃な喫茶店でもないかと探していたところ、幸か不幸か「どすこい四文屋」の看板が視界を捉えた。冷たいお水とアイスコーヒーでいいんだけどな、でも今ビール呑んだら最高だろうな。そんな酒呑みの悲しい性に導かれ、どすこい四文屋への階段を降りていく。オープン直後で先客もまばらな店内は、堂々とした力士の壁画が異世界にでも紛れ込んだかのような空気を演出している。開け放しにされた入口付近のカウンターに通されたため期待したほど涼しくはなかったのだが、ここまで来てしまったのだから仕方がない。今日の宴を楽しむとしよう。

肉も魚も酒も充実、心躍るメニューを吟味する


さっそく味のある手書きのお品書きを広げる。そうそう、四文屋のメニューってこういう感じだったよな、と思い出しながら喉と身体の乾きを潤すべくドリンクを吟味。ビール、日本酒、焼酎、サワー系、ワインもソフトドリンクも並び、もはや安定感すら感じる。今日はぜったいに無理だけど、いつか金宮焼酎(ストレート)の梅割りをやってみたいとずっと思っている。


肉系のメニューがこちら。焼とんに焼とりに焼ぎゅう、煮込みに冷製肉と、多くのファンに愛される四文屋ならではの品揃え。数は少ないけど野菜系のスタンバイもあり、これはこれで良いアクセントになる。


そして魚系のメニュー。刺身、炉端焼、天ぷら、寿司と一品料理。魚好き、日本酒好きの私としてはかなり心躍るラインナップと言える。刺身と日本酒をちびちびやりながら、焼き物か天ぷらか肉系でアクセントを加え、最後に寿司で締めるなんて最高じゃないですか。今日じゃないけどいつかコンディションを整えてやりたいと思う。また店内のホワイトボードにその日のおすすめメニューなどが張り出されているので、来店の際にはそちらにも注目してもらいたい。

猛暑にやられた身体を労りながらひとりの宴を楽しむ


さっそく生ビールをごくごくと、とも思ったのだが、水分が抜けきっている身体にそれは危ないかも知れないと思い、瓶ビールでゆっくりと潤していく作戦に(事前に水筒の水を飲んでいた)。うれしい赤星、お通しはマグロを煮付けたもの、かな。


水分と塩分を補給するならこれでしょ、ということでホワイトボードのメニューから塩昆布きゅうりを。予想通りの味ではあるけれど、いまの私には身体が喜ぶレベルで美味しいのであった。


やはりホワイトボードのメニューから、ちょっと贅沢だけどウナギの蒲焼を所望。夏といえばの食材、元気を譲り分けてもらいたいのだ。酒場のうなぎってどうかなとも思ったけど、以外にも身は柔らかくタレの味も申し分なし。ウナギので呑むのもけっこういいなあなんて、思いもよらず優雅な時間となった。


ここでお酒を梅干しサワーにチェンジ。普段はプレーンな酎ハイばかり呑んでいるけど、今日は身体が酸っぱいものや塩分を欲しているのでうってつけのセレクトかと。梅干しを潰しながら味の調整ができるところもけっこう楽しくて良いではないか。


さっぱりとしたアテが欲しくなり、四文屋の定番である大根酢醤油を。ほんのりとした酸味、サクサクとした食感が今の気分にはぴったり。


最後にもう一杯、チューハイに見えるけど三ツ矢サイダー割。甘いお酒はほとんど呑まないけど、やっぱり今日はいつもと違うものが欲しくなっている。爽やかなあの味にお酒がプラスされて、ついついごくごくとやってしまった。たまにはこういうのもいいよなと気付かされつつ、無事元気もチャージできたところで、のんびりと店を後にした。

酒場が星の数ほどある新宿で、安心できる店がまたひとつ増えた

真夏の暑さにやられて逃げ込んだ「どすこい四文屋」。このお店の名物である焼き物も刺身も食べなかったけれど、その日の状況や体調や気分で柔軟な使い方ができる素敵な酒場と知ることができた。肉が食べたいときにも、魚が食べたいときにもしっかりと思いに応えてくれるオールラウンダーっぷり。また独りでふらっと来てもいいし、友人を連れていろんな種類のおつまみを堪能してもいい。お酒が呑める店なんて履いて捨てるほどある新宿で、安心して暖簾をくぐれる店をまたひとつ知れたことは、私にとって大きな収穫。また折を見て、そして今度は万全の体調で、ぜひとも訪れたいと思う。

店名/どすこい四文屋
住所/東京都新宿区新宿3-22-4 モア新宿サンパークビル B1F
電話/03-6380-5015
営業時間/月〜金16:00 – 23:15・土日祝15:00 – 23:15

※本記事は筆者訪問日(2025年8月)時点の情報をもとに作成しています。
※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があります。
※飲酒は20歳になってから。お酒は楽しく適量で。