ファミレスでひとり呑みする日が来るなんて、夢にも思ってなかった。これが、この日私の身に起きたすべてのことを取りまとめる感情だ。だってファミレスじゃないですか、ファミリーレストランじゃないですか、家族みんなで楽しくお食事するお店じゃないですか。古くはハンバーグとエビフライとお子様ランチのイメージが強かったじゃないですか。古いけど。それなのに私ときたら、このファミレスでビールと白ワインといくつかのおつまみによって、見事に上機嫌にさせられてしまったのだ。サイゼリヤって本当にすごいお店だなぁと、痛感されられてしまったわけなのだ。
全国に1000店以上を展開、安さとクオリティの 「サイゼリヤ」
今さら説明も不要かと思うが、せっかくの機会なのでサイゼリヤを紐解いてみる。サイゼリヤは1970年代前半にチェーン展開を開始し、2021年8月現在で国内1089店舗、海外で464店舗を展開しているイタリア料理店。「日本を真に豊かな国にするお手伝いをする」を企業理念に掲げ「スパゲッティをラーメンと同じ価格で提供」することを念頭に、ポピュラープライスと呼ばれる期待外れに終わらない価格帯とメニュー構成で「安くて美味しいもの」を提供することをポリシーとしている。この方針が功を奏してか、近年苦戦が続く外食産業の中でも注目を集める存在となっている。グラタンやピザ、ドリアなど豊富な人気メニューが取り揃えられているが、酒呑みとして見逃せないのが十数種類のワインを、けっこう驚く取り揃えているところ。安くて美味しい、お酒も充実。なんだかワクワクしてしまうではないか。
ここは居酒屋なんじゃないか、そんな錯覚すら覚える充実の酒呑みメニュー
サイゼリヤメニューの全容については他の詳しいサイトに譲るとして、ここでは酒呑みブログらしく、お酒とおつまみまわりのメニューを中心に見ていこうと思う。前菜メニューとアルコール系のメニューが同じ見開きに掲載されていて、すこしニヤリとさせられる。なるほどね、前菜という建前で売られているこれらのメニューは、おつまみとしてもいけますよ、という密かなメッセージなのだろう。
先述したが、サイゼリヤで驚愕するべきは、何においてもワインなのだ。グラスワインは白も赤も100円、デカンタ250mlは200円で、500mlは400円。マグナムという名の1500mlボトルは1100円。あの、ちょっと、これ、コンビニの安ワインより安いんじゃないだろうか。何度見ても金銭感覚が木っ端微塵に破壊される感じ、嫌いじゃない。
安くて美味しくて、ちょっと申し訳なさすら覚える宴へ
ワインのあまり安さに興奮してしまったので、定石どおり生ビール(400円)でクールダウンスタート。生ビールはこの一番搾りのワンサイズのみで、通常の居酒屋よりも小ぶりな印象を受ける。が、この器がガラスでなくプラスチックなので、その軽やかな重量感によって単にそう感じてしまっただけなのかもしれない。
そしてやって来たおつまみ一品目は、青豆とペコリーノの温サラダ(200円)。サイゼリヤではほぼ必ず頼んでしまう、私にとっても定番アイテムだ。以前はベーコンとか入っていたような、ペコリーノチーズの存在感はここまででもなかったような、名前も微妙に違っていたような気もするが、美味しいので何の問題もない。青豆の旨味が程よくて、あっという間に平らげてしまう。
続いては辛味チキン(300円)。ピリ辛に味付けされた骨付きチキンは、まごうことなきビール泥棒。手の汚れなど気にせず、ガツガツとかぶりついてやった。
閑話休題。サイゼリヤを訪れたなら、店内に設置してある調味料コーナーのチェックを忘れてはいけない。ドレッシングやオリーブオイル、塩コショウなどが用意されているので、好みに応じてピックアップすると良いだろう。食事の内容にもよるが、私のお気に入りは唐辛子フレーク。子供でも楽しめる味付けが多いサイゼリヤの食事に、唐辛子のパンチを効かせて楽しんでいる。
そして、いよいよ例のものを注文してやった。白ワインのデカンタ500ml(400円)。量と値段への驚きはすでに述べたとおりだが、肝心の味はというと、これがしっかりスッキリ辛口で実によろしい。ワインについて豊富な知識と強いこだわりを持っている人でなければ、十二分に楽しめるシロモノなんじゃないかと思える。量、値段、味。どれをとっても嬉しくなっちゃうクオリティだ。
そんな白ワインに合わせたかったのが、このブロッコリーのくたくた(300円)。なんだか独特なネーミングだけど、これは程よい塩加減で、極限に柔らかくなるまでブロッコリーを茹でたもの。シンプルな一品だが、これが本当に良いアテになる。
そして、おつまみのトリを飾るのは煉獄のたまご(300円)。名前と色合いから激辛メニューなのかしらとも思ったが、特にそのようなことはない。鬼が出てくる大ヒット漫画との関連性も見受けられない。赤いのは酸味の効いたトマトソースで、それを卵でマイルドにしつつバゲットに乗せて口へと運ぶ。満足度の高さがすごいじゃないですか。
しこたま呑んで食って、この値段。ありがとうと言いたいのはこちらの方です。
この日、お酒とおつまみを合わせて6品オーダーし、価格は税込み1900円だった。生ビールも呑んだし、白ワインも500ml呑んだ。かなりいい感じに酔ったわりに、1900円。なんだか本当に申し訳なくなってしまうというか、会計時にありがとうございましたと言われてみたのだけど、お礼を言いたいのはむしろ私の方だとすら感じてしまったのだった。
休日の昼前、都心部のサイゼリヤはほどほどの客入りで、大半がランチ目的の一人客だったように思う。PCで作業をしていたり、読書をしていたり、参考書を開いて資格の勉強をしていたり。この時間から白ワインをあおっているのは私だけだったが、何の気後れもせずにお酒が楽しめたのは、この店の自由さと懐の深さによるものなのかもしれない。
いわゆるファミレスでひとり呑みをする日が来るとは思わなかったけど、こんなにも素敵な思いができるのなら、これは足繁く通ってしまうことになるだろう。ありがとうございました、と言わせてほしい。
※本記事は筆者訪問日(2022年10月)時点の情報をもとに作成しています。
※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があります。
※充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。
※飲酒は20歳になってから。お酒は楽しく適量で。