【赤羽「丸健水産」】商店街の片隅で味わう極上おでん

赤羽

お酒の味や楽しみ方は、どこで呑むか、といったその環境にも大きく左右される。いつも呑んでいる缶ビールでも、自宅で呑むのと快晴の山頂で呑むのとでは大きく異る。また特急電車の中で呑む、野球場で呑む、キャンプファイヤーの前で呑む、ライブハウスで呑むなどなど、お酒が美味しくなる環境は数多に存在すると考えられるが、酒呑みの皆さんには、以下のようなシチュエーションもおすすめしておきたい。それは、アーケード商店街のなかで極上のおでんをつつきながらの立ち呑み、というものである。それが叶うのが赤羽の名店「丸健水産」だ。

聖地・赤羽において屈指の人気を誇る「丸健水産」

JR赤羽駅東口を出て、いわゆる呑兵衛の聖地である一番街商店街へ歩を向ける。昔ながらの飲食店や書店、青果店などが並ぶアーケード街の一角に、丸健水産はある。この地で60年以上、手作りのおでんが立ち呑みで楽しめる名店だ。練り製品は魚を1匹ずつ捌き、成形までがすべて人の手によるもの。このおでんはテイクアウトで購入することもできるが、ほとんどのお客が店頭で、お酒を片手に楽しんでいる。

超定番から変わり種まで、圧倒的なおでんラインナップ


各種おでんの価格はご覧のとおり。大根やたまごなど不動の人気メニューに加え、スタミナ揚げ、巣ごもりといった変わり種までずらりと勢揃いだ。これにワンカップ酒(マルカップ)や缶ビールなどアルコールのメニューもあるが、見る限りほぼ全員の客がワンカップ酒を注文している。その理由は明確なのだが、詳しくは後述するとしよう。

注文はカウンターで、お店の方に席へ誘導してもらうスタイル

丸健水産での注文の流れは、まずカウンターで食べたいおでんとお酒を注文、その後、店員さんが頼んだ商品とともに机へと誘導してくれるというものだ。そのため、予め席を確保してから列に並ぶといった行為は控えるべきだろう。また赤羽の他の店と同様に、極度に酔った状態での利用はできないので注意が必要だ(泥酔状態でなければ二軒目としての利用も可能)。

透き通った優しい出汁といただく、熱々のおでん


ということで、さっそく私も列に並び、無事注文を終えてテーブルに着くことができた。今回はおでん種をアラカルトで選ぶのではなく、お店の方が定番品を中心に5〜6品選んでくれ、さらに1ドリンクが付いた「おでんセット(800 or 850円)」をオーダー。ドリンクはもちろんワンカップ酒(マルカップ)に。

お皿に盛られたのは大根、卵、厚揚げ、こんぶ、はんぺん、さつま揚げ。おでんの王道とも言える品々が揃った。透き通った優しい出汁をまとったおでんたちは、大げさでなく夢見心地な味わい。これにカップ酒を合わせれば、もうこの上なく至福の時が訪れるのだ。

おでんの後のお楽しみ、日本酒の出汁割を満喫

丸健水産を訪れる人のほとんどがワンカップ酒(マルカップ)を呑む理由、それはおでんを食べ終えた後にお楽しみが待ち受けているから。店内の至るところに案内が貼られているのだが、まずはお酒を全部呑み干してしまわないよう、約50cc程度残さなければならない。


親切なことに、ワンカップ酒(マルカップ)の側面には目安となるメモリが記されているので、ここを気にしながら呑み進めるのが良いだろう。

そして50cc程度お酒を残すことに成功したなら、50円を握りしめて再度受付のカウンターへ。「出し割お願いします!」と元気よく店員さんに伝えたなら、お酒の残ったカップへおでんの出汁と七味を追加してくれる。


このおでんの出汁割をはじめて呑む人は、きっと衝撃を受けるのではないかと思う。ちょっと普通ではないほどに美味なのだ。これを飲まずして丸健水産を、赤羽を語ることなかれ。出汁割りによって、私の小さな宴は大団円を迎えることとなった。

おでんとカップ酒と出汁割、すべては商店街の中に。


優しくて奥深いおでんとカップ酒、そして出汁割にいたるまで。心の底までしっかりと温めてくれた丸健水産なのだが、そういえばここは赤羽の、昔ながらの商店街アーケードの中なんだと気づく。青果店や書店などが並び、地元の人々が日々の買い物のために行き交っている商店街。私が知らない誰かの日常風景のなかで、非日常的に美味い酒を呑む。この、ちょっとありえない状況も、丸健水産のお酒を美味しくしている要因のひとつなのではないかと思った。聖地・赤羽の最深部には、こんなにも心地よい酒と時間が待ち受けている。

店名/丸健水産
住所/東京都北区赤羽1-22-8
電話/03-3901-6676
営業時間/10時30分~19時(土日祝日も含む)
定休日/毎週水曜日

※本記事は筆者訪問日(2021年10月)時点の情報をもとに作成しています。
※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があります。
※充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。
※飲酒は20歳になってから。お酒は楽しく適量で。