ふと、自分が仕事をリタイアしたあとの日々に思いを巡らせる。ただでさえ目まぐるしく変化している現在だから、数十年後の未来を予測することなんてできない。ただどんな時代になっていようが、毎日心穏やかに暮らしていられたらと思う。週に何回かはお気に入りの居酒屋でほろ酔っていられたら最高だろう。そんなことを私に思わせたのは、池袋の「ふくろ」さんに他ならない。
朝飲みからいける!池袋の人気大衆居酒屋「ふくろ」。
池袋駅西口のほど近く、東武百貨店と池袋芸術劇場の間の路地に「ふくろ」さんはひっそりと佇んでいる。一見だとちょっと入りづらいかもしれない扉を開けると、そこには店内を大きく囲むカウンター席。壁に貼られた壮観な短冊メニュー。創業60年を超える老舗の、時間によって磨かれた深い味わいを堪能できる。
平日の昼前でも店内はかなりの賑わいを見せている。お客さんの大半が男性、それも年齢層はかなり高めだ。人生の大先輩たちに若干緊張しつつ、彼らのような客に選ばれる店というのは間違いがないように思える。
人生の大先輩たちに愛される酒場で飲む。
カウンターに腰掛け、瓶ビールをオーダー。最初の一杯目はお店のおねえさんが注いでくれた。お通しをつまみながら短冊のメニューを物色、今日の作戦を練る。
とりあえずさっぱり始めたかったので、板わさを注文。安定の味だけど、しっかりと飾り切りがされていて見た目でも楽しませてくれる。
今日のおすすめとしてホワイトボードに書かれていたホタルイカ。ちょうどよい加減の酢味噌が豊かな味わいに仕立ててくれている。私のもとにこのホタルイカが届けられた直後、おねえさんがホワイトボードからホタルイカの記述を消していた。これが最後の一皿だったのかと思うとうまさもひとしお。
瓶ビールを飲み終えたのでチューハイ(焼酎とタンサン)にスイッチ。壁のドリンクメニューを見てもわかるとおり、ふくろさんでは○○サワーのようなメニューの記載はなく、緑の瓶入り焼酎と割りものをそれぞれオーダーするシステム。氷もたっぷりと用意してくれるので自分好みの濃さで楽しむことができる。
もう一品追加、いか納豆。納豆にいかの刺身を乗せたもので予想通りの味だったけど、こういうのが食べたくなる瞬間ってあるよね、ということで。しっかり美味しい。
今回はさくっと飲むメニューだったが、季節によっては一人鍋が充実していたり、揚げ物系もよく出ているらしい。何度も通って、その時々のおすすめを楽しんでいきたいと思う。
酒場の価値を高めるのは客層なのではないか、と思う。
先にも触れたが、ふくろさんの店内には他に比べても年齢層高めのお客さんで溢れている。平日の昼前からこの状態だから、すでに仕事をリタイヤした御仁も多いのではないかと推測できる。これまでにさまざまな酒場を巡ってきたであろう百戦錬磨の先輩たちが、足繁く通っている。その事実こそが、ふくろさんの大いなる価値を証明しているのだろう。
またこうも思う。私も仕事を無事にリタイアすることができたなら、ふくろさんのような店で、昼間からしっぽりと酒を楽しみたいものだ、と。
店名/ふくろ
住所/東京都豊島区西池袋1-14-2
電話/03-3986-2968
営業時間/[月~土]8:00~24:00、[日・祝]8:00~23:00
定休日/年末年始※本記事は筆者訪問日(2021年3月)時点の情報をもとに作成しています。
※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があります。
※充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。