【池袋「丸冨水産」】東京で天然鮮魚、夢みたいな現実をかなえる店

大衆酒場・居酒屋

東京に住んでいる。正しく言うと、良くも悪くも、東京に住んでいる。そう、東京で暮らすことには、大きなメリットも大きなデメリットも、双方がついて回るのである。経済の中心として多くの企業や店舗・飲食店が軒を連ねインフラも整っているとされること、日本全国・世界各国へのアクセスの良さ、そんなところがメリットになるのかもしれない。ステイタス?ブランド?ファッション?この際カタカナ語は置いておこう。反対に、人の多さ、空気や水の悪さ、物価の高さ、土地や建物・居住空間の狭さなどは明らかにデメリットとして挙げられてしまうだろう。さまざまな面で便利であることの代償として、日々の生きづらさみたいなものは拭いきれないのである。

そして、この酒呑みである私個人が痛切に感じている東京のデメリット、それは「魚がイマイチ」ということである。全国から魚介類が集まるとされる豊洲市場や旧市場である築地などは有名かもしれないが、それらが果たしているのはあくまでも生鮮食品の流通拠点としての機能のみ。また東京都には、島しょ部のみにしか漁港が存在しないため、島しょ部以外の都内で食べられる魚介類のほとんどは、都外から輸送されたものと言える。漁港のある町へ訪れると、魚介類のあまりの美味しさに腰を抜かす。こんなにも美味しい魚を口にすることが、ここに住む人たちの日常なんだなと想像すると、心の底から羨ましくて仕方がない。

さて、前置きが長くなってしまったが、そんなこんなの東京都内において「天然鮮魚にこだわっている」と掲げる居酒屋がある。それが今回紹介する「丸冨水産」。東京の魚について大いなる不満を抱えている私が、素通りすることのできないお店なのだ。

理念高く「魚」にこだわる「丸冨水産」

2022年現在、東京都内に3店舗(目黒、池袋西口、西荻窪)を構える丸冨水産。今回はその中から池袋西口店へ訪問した。魚をメインとする居酒屋は数あれど「養殖の魚ではなく旬の天然鮮魚にこだわっている」との文言を掲げる丸冨水産には、酒好きならずとも注目せざるを得ないだろう。日本の魚食文化に貢献したいという企業理念にも共感、そしてどんな魚が食べられるのか、ワクワクせずにはいられない。

これだけで呑める?魚好きをワクワクさせるお品書き

カウンター席に案内され、卓上のメニュー表を開いてみる。いや、ほんとに、これほどまでに魚好きの心を捉えて離さないメニューってあるのかなと思う。刺盛り、貝刺、まぐろ、サバ、サーモン、うに、揚物も焼魚も煮魚も、プラスして各種逸品やサラダまで。魚で一杯やりたい人が求めるものを全部かなえてくれているんじゃないかと思えるほど。店内の短冊メニューも眺めながら、注文するものに悩みまくるという嬉しくも苦しい作業が待ち受けていることだろう。



ドリンクメニューはこちら。各種揃っている印象に、やっぱりここに来たら日本酒に行っちゃうんだろうなぁ、なんて思いながら。とりあえずビールからスタートして、フードもドリンクも次の一手を悩んでいくとしよう。

都心では文句なしにハイレベル、新鮮な魚をじっくり味わう


今日の宴も生ビール(528円)からスタート。爽やかでライトなアサヒスーパードライの生は、数あるビールの中でも魚食にいちばん向いているんじゃないかなと個人的に思ったりしている。


そしてスピードメニューとして冷奴(253円)をオーダー。また冷奴を頼んでしまった。期待を裏切ることのない安心感が、これから訪れる魚たちへの期待を膨らませる。


意外にも次にやってきたのは揚げ物である手作り鯵フライ(528円)。揚げたてでホクホク、これには恐れ入った。冒頭でも同じようなニュアンスを記したが、普通、都心部のアジフライが港町のそれに及ぶことはない。それどころか冷凍食品を使用している場合すらある。それがどうだろう、「名物」と冠されたこの手作り鯵フライは、港町の味にもしっかり張り合っているように思う。レモンをかけて、マヨネーズで、ソースでも、いろいろと楽しませてもらった。



ところで卓上に置かれている醤油とソースも、丸冨水産オリジナルのようだ。特に濃厚生ソースは「海鮮フライに合う」をコンセプトに作られているそうで、確かに手作り鯵フライの、その素材の良さを引き立たせていた。こういう企業努力を目の当たりにしちゃうと、どんどんファンになっていっちゃうんだよな、なんて。


スピードメニューかと思って頼んでいた鮮魚のなめろう(638円)が到着。持ってきてくれたお兄さんが「なめろう、できましたー!」と声をかけてくれたように、注文を受けてから作ってくれていたようだ。実際にカウンター正面の厨房から、トントンと包丁を叩く音がしばらく聞こえていた。魚の新鮮さと味付けの妙で、ビールがどんどん進んでいく。付け合せの海苔を巻いて口に放り込むと、新しい次元の幸せが押し寄せてくる。これをスピードメニューだと思っていた浅はかな自分を恥じなければならない。


もうだめだ、これは日本酒だ。ということで急いで注文したのは「冨雄の隠し酒(1078円)」。こちらも丸冨水産のオリジナル日本酒で、マイルドでほんのり甘い香りが特徴的。樽酒のような雰囲気も一瞬感じたかもしれない。それにしても冨雄って誰なんだろう、お店の人と仲良くなったら聞いてみたいなと思ったり思わなかったり。


日本酒に合うような、ちょっとすっぱいおつまみでも、と思ってオーダーしたホヤ酢(528円)。こりこりの食感とみずみずしさが嬉しい。生姜も良いアクセントとなり日本酒が加速。これも大当たりじゃないですか。


そしてそして本日のハイライト、おまかせ3点盛り(1078円)がやってきて私のテンションは最高潮に。この日の3点盛りは左からメダイ、カツオ、サーモンとのこと。こりこりとした食感を感じるメダイに、濃厚な風味のカツオ、サーモンは脂がしっとりしていて大満足。味わいの違う3種類を揃えた一皿、もう刺盛りのお手本なのではないかと思えるほどだ。

美味しい魚が作り出した、なんとも平和でなごやかな空間


この日は平日の昼前から呑み始めたのだが、店内にはお酒を呑むカップルに、座るなりいきなり貝刺しをオーダーした常連と思われる高齢男性、さらに酒を酌み交わしながら熱心に語り合う若い男性ふたり組、ランチの海鮮丼を頬張る営業マン風の男性と、実にさまざまなプレイヤーが集っていた。素性はまったく違うけれど、みんな共有して嬉しそうに、機嫌良さそうにしていたのは、魚の美味しさと無関係じゃないはず。美味しいものは人を幸せにするよなぁ、と勝手なことを思ってみた。

そういえば、さっき呑んだ日本酒「冨雄の隠し酒」のラベルを何気なく見てみると、そこに「販売元:株式会社フーデックス」と記載されていた。この店を運営している会社かな、と思い検索してみたところ、やはりその予想は当たっていた。そればかりか、フーデックスは池袋に本店を構える人気ラーメン店「屯ちん」を運営している企業ではないか。なるほど、たしかにこの丸冨水産池袋西口店が2階に入るビルの1階部分には屯ちんがあるし、池袋東口の屯ちん本店の上階には丸冨食堂というここの姉妹店があるな、と合点がいった。屯ちんは、私が高校生のころはじめて訪れた有名ラーメン店であったし、その後今日まで、何度も何度も数え切れないほどお世話になっている思い入れのあるラーメン店だ。屯ちんとの思い出話は書くと長くなりそうなので、こちらの記事にまとめてみた。

東京都心で、天然鮮魚で呑む。夢のような時間が堪能できる店

東京に住んでいるくせに、美味しい魚が食べたいだなんて本当に贅沢なこと言っているなぁと思う。鮮度が命の食材を、産地でない場所で美味しく食べたいだなんて。でもその無茶振りにも近い酒呑みの願いを、確かな企業努力でかなえてくれる店があるなら、これはもう足繁く通わなければいけないのである。今回紹介した丸冨水産には、まだまだ食べたことのないメニューが数多く存在する。そのすべてを制覇するつもりで、このお店の存在に感謝しながら、これからも呑んでいきたいと思うわけで。

店名/丸冨水産 池袋西口店
住所/東京都豊島区西池袋1-27-1 2F
電話/050-5597-9420
営業時間/24時間営業
定休日/無休

※本記事は筆者訪問日(2022年8月)時点の情報をもとに作成しています。
※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があります。
※充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。
※飲酒は20歳になってから。お酒は楽しく適量で。