【中野「魚の四文屋」】刺身も焼魚も安くてうまい海鮮居酒屋

酒場をめぐる

JR中野駅で中央線を降り、北口の改札を出る。私自身、ちょっと久しぶりの中野なんである。ご存知の方も多いと思うが、駅北口とマニアの聖地たる中野ブロードウェイを結ぶ中野サンモール界隈は、無数の飲食店と入り組んだ路地によって構成された、まさにカオスを具現化したようなエリア。私もこの場所でさんざん呑んできたのだが、こうしてしっかりレポートを書くのははじめてだ。

紹介したい酒場は星の数ほどあるのだが、この日の私の気分は圧倒的に「魚」だったのだ。魚で呑みたい、魚で日本酒が呑みたい、湧き上がる欲と情熱をおさえられるわけもなく、足を向けたのは何度もお世話になっている「魚の四文屋」だった。行き慣れた酒場の安心感たるや。

四文屋グループの海鮮特化型人気店「魚の四文屋」


中野駅北口から徒歩5分ほど、サンモール商店街を抜けた先の路地にある「魚の四文屋」。四文屋グループの中でも海鮮に特化した店舗で、新鮮な刺身や炙り魚、煮魚などを中心に、安価で美味しい酒と肴を提供する海鮮居酒屋だ。店内にはカウンター席、テーブル席、テラス席が用意されており、ひとり飲みからグループ利用まで幅広く対応。週末には昼間から賑わうほどの活気を見せている。

四文屋は1998年、新井薬師前で焼きとん店として創業した。屋号は江戸時代の安価な飲食の代名詞である“四文屋”に由来し「安くて旨い」を徹底して守り続けている。その後、中野を中心に業態を拡大し、焼きとん専門店のほか、牛肉・ホルモン専門、串揚げ専門、魚専門といった特化型店舗を次々に展開。どの店もメニュー構成に明確な個性を持ちながら、共通して低価格と気軽さを売りにしている。

このブログでは過去に新宿・思い出横丁の四文屋を紹介しているが、グループのどの店舗を訪れても、味、価格、店の雰囲気ともに申し分なく、満足度の高い時間を過ごせているように思う。

勢いと活気を感じずにいられない木目を活かした店内


なかなかの暑さにみまわれた平日の夕方、仕事が早く終えることができた私が迷うことなく足を踏み入れた魚の四文屋。店内にはまだ数人の客しかおらず、私はカウンター席の最奥を陣取ることに成功した。コミュ障ぼっち呑み助のポールポジションである。

木目を活かした店内のいたるところにメニュー柵が張り出され、店の活気と勢いを感じさせるに十分。

さっそくやっていくことにする。

魚を楽しむことに特化した、味わい深く潔いお品書き


なんとも味わい深い手書きのメニュー表が四文屋の魅力のひとつのような気がする。魚の四文屋のドリンクメニューは、ビールとサワー、焼酎に日本酒という潔いもの。海鮮を楽しむための店だから、それに合うお酒を厳選しているようにも見える。日本酒をはじめ、店内にはメニュー外のドリンクも張り出されていたので、訪れた際はメニュー表と店内メニュー柵を眺めてみると良いだろう。


そして思わず心が踊ってしまうフードメニューがこちら。刺身、焼魚、揚げ物、一本料理とあるが、大部分が海鮮と野菜で占められていて実に壮観である。煮込みなどの肉料理は、メニュー表の片隅で恥ずかしそうに書かれていて愛らしい。目移りしてしまう品々から、今日の宴のために厳選しなければならない。嬉しくも苦しい作業の幕開けである。

魚とお酒、好きなものに真正面から向き合う贅沢


いつも同じパターンでしか呑んでないよなぁ、とは思いながら、今日もルーティンとしてこなしていく。瓶ビールはアサヒスーパードライ。魚を楽しむならキリッとしたビールがやっぱりいいよね、ということで喉を潤し、宴のために心を整えていく。


どんなプライドなのか謎ではあるが、魚の店だからと行って最初からいきなりがっついたりしない(がっつくことももちろんある)。とうふ(冷)からスタート。豆腐は豆腐なので想像を超える味わいがあるわけではない。それでも、ひとりで呑み始めたんだという実感がひしひしと湧いてくる。出汁醤油が、家で食べるそれとは一線を画してくれるのもまた良し。


そしてけっこう早い段階でご登場いただけた、刺身の3点盛である。美しく盛られた一皿に、もはや気分は最高潮である。これを食べにきたんだよな。これで呑むためにきたんだよな。ひときれひときれをゆっくりと味わいながら、この幸せを噛み締めたのだった。はたかれ見れば、あまり気持ちの良くないおじさんの光景が広がっていたかもしれない。


ここでいつもの、いつものパターンの、まったく芸のないチューハイにスイッチ。ブログのことを考えるならもっと違うものを呑めばいいのに、とこれを書きながら思うのだが、いやいや自分が好きなものを呑めばいいじゃない、楽しんでナンボですよと大いなる自己矛盾を抱えるのであった。


少し重めのものも食べたいということで、はも唐揚を所望。白身魚を揚げたものって本当に美味しいよなぁ、生粋のおつまみだよなぁなどと考えながら、唐揚もチューハイもあっという間になくなっていく。



そして孤独で楽しい宴はクライマックスへ。司牡丹とカンパチの刺身をお迎えした。脂の乗ったカンパチをゆっくりと味わい、舌に残った旨味と脂をキリッとした司牡丹で流していく。生きていてこんなにも幸せを感じることってそうそうない気がする。これを味わうために、この後の人生を使っても良いとすら思ってしまうのだ。

好きなものを食べ散らかし、好きなものを呑み荒らして、たっぷりと満たされた心を抱えて店を後にした。

魚とお酒、必要なのはそれだけだと再認識させてくれる酒場

これまでにさんざん語ってきたように、私はお刺身と味わう日本酒が大の好物である。週に何度かはこの組み合わせで晩酌したいと思うし、旅に出るのなら、魚とお酒の美味しい土地へ赴きたいと思う。そこに温泉もあったら最高だ。このような趣向が凝り固まってしまったので、もはや海外旅行への興味など微塵も持ち合わせていない。多くのお金と時間を使って刺身&日本酒のない場所へ行くことなど、私の人生においては無駄でしかないとすら思うようになってしまった。そんな生粋の日本人であり日本の酒呑みたる私をしっかりと満足させてくれる酒場、魚の四文屋は、私にとって大切な酒場のひとつであり、これからも機会あるごとに足繁く通いたい憩いの場なのだ。次は何を肴にお酒を呑もうか、いまから楽しみでならないのである。

店名/魚の四文屋 中野店
住所/東京都中野区中野5-56-15 金井ビル 1F
電話/03-3387-7894
営業時間/月〜金17:00 – 00:00、土日祝12:15 – 00:00
定休日/元旦
※本記事は筆者訪問日(2025年7月)時点の情報をもとに作成しています。
※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があります。
※飲酒は20歳になってから。お酒は楽しく適量で。