【新宿「晩杯屋 新宿東口店」】渦巻くエネルギーで背中を押してくれる名店

酒場をめぐる

酒場にはふたつの種類があると個人的に考えている。ひとつは「背中を撫でてくれる酒場」で、そこで過ごすことで疲れを忘れ癒やしを与えてくれる。もうひとつは「背中を押してくれる酒場」。ガヤガヤと賑やかだが、元気やパワーやエネルギーがもらえて、明日への活力になるような酒場だ。今回紹介する「晩杯屋 新宿東口店」はまさに後者の立ち呑み酒場。店内に渦巻く熱気に圧倒されつつ、帰るころには不思議と気分は晴れやかだった。

リーズナブルで高クオリティな酒場「晩杯屋」

晩杯屋(ばんぱいや)は都内を中心に展開する立ち飲み居酒屋チェーンで、気軽に安く飲める「せんべろ」の代表的な存在と言っても過言ではないだろう。直近のデータでは東京43店舗、神奈川4店舗、兵庫1店舗、大阪4店舗の合計52店舗を展開(2024年11月現在)。店名の由来は「晩酌」と「一杯」を掛け合わせたものとのことで(ドラキュラ的な語感もあると思う)、また店舗によっては昼呑みが楽しめたりもするので、多くの酒好きから支持を得ている。晩杯屋の魅力は、後述もするが何といってもリーズナブルな価格設定とおつまみのクオリティ。親愛なる酒好きの皆さんには、ぜひ一度立ち寄ってもらいたい酒場のひとつだ。今回は数ある晩杯屋のなかでも比較的新しい新宿東口店に足を運んだ。

熱気渦巻く店内、そして100円台が充実のおつまみたち

少し天気の怪しい休日の午後、新宿の雑踏を抜けて晩杯屋新宿東口店にたどり着く。店の外にまであふれ出る酔客たちの熱気に、私が潜り込む隙間が残っているか不安になったが、だめなら他を探すまでとお腹に力を入れて店内へ突撃した。文字通り人と人とかき分けながら奥へ進むと、カウンターの角に小さな空間が残されており、左右のお客さんがすっと机にスペースを作ってくれた。酒呑み同士の以心伝心、本当に有り難い。

カウンター上や壁に敷き詰められたメニュー短冊を眺めると、やっぱり安いなあと思わされる。ドリンクのメニューは豊富だし、なによりおつまみは100円台のものが充実。晩杯屋の強さや勢いを感じずにはいられないのだ。メニューはかなりの頻度で更新されるようで、また店舗によっても違いがあるようなので、参考までに晩杯屋公式HPから画像をお借りした。この値段のインパクトだけでも味わってもらいたい。

次々に盃を空け、おつまみを平らげ、新しい注文を繰り出すまわりの熱気に負けないよう、私も気合いをいれて呑みはじめることにした。

安いだけじゃない、しっかり美味しいから次から次へと手が出てしまう。

初手はもちろん生ビール(490円)。晩杯屋の生ビールはキリンラガーという点が個人的に気に入っている。まったく見かけないわけではないけど、あまり多くも見かけないキリンラガーの生ビール。けっこう好きなんだよね。

続いてスピードメニューとしてオーダーした「岩下のらっきょう(150円)」。新生姜で知られる岩下食品のもの(のはず)で、晩杯屋に来るとけっこうな確率で頼んでしまう。酸味と食感が良く、またおつまみとして長持ちもするので、酒の席では貴重な戦力としてカウントしている。

晩杯屋の名物かもしれない「煮込み(玉子入り)(190円)」。さまざまな酒場で煮込みを食べてきたけど、晩杯屋の煮込みはトップクラスに美味しい気がしている。旨味と塩っぱさのバランスが絶妙。玉子の入っていないスタンダードな「煮込み(150円)」や、豆腐だけが入っているという「煮込み(豆腐のみ)(110円)」というバリエーションもある。

生ビールを瞬殺したので、2杯めは「ゴールデンチュウハイ(290円)」に。これは宝酒造の「宝焼酎ゴールデン」をベースにしたチューハイで、キリッとしたプレーンな味わいと後味の甘みやコクが特徴。個人的にも晩杯屋での鉄板ドリンクとしている。

もっとタンパク質とっていこう、ということでオーダーしたのは「納豆オムレツ(190円)」。大の玉子好きであり、大の納豆好きである私にとってはまさに夢のようなおつまみである。値段のわりにずっしりとした重量感で、高い満足度を感じることができる。

そういえばシューマイ(220円)もあったな、ということで。ひとくちサイズのシューマイが5個も乗って有り難い限りである。盃を重ねながら、好きなものを食べられるだけ食べた、というひとり呑みの時間だった。

店内に渦巻くエネルギー、酒場の存在理由がここに。

休日の午後だからという側面はあろうが、何度も言うようにこのときの晩杯屋は常に満席状態であった。複数人のグループも数組いたが、店の入口から最奥へと連なるカウンターを占めていたのは圧倒的にひとり客。誰もが黙々と自分の酒とおつまみに向き合っていた。そして厨房内では大量の注文を高速でさばく店員さんたち。声を掛け合いながら威勢よく仕事をこなしていた。客の熱気と店員の熱気が混じり合い、店内は混沌としたエネルギーを生み出していた。
普段は少し静かな環境でゆっくり呑みたいと思う私なのだが、この日の、雑踏を極めた晩杯屋に足を踏み入れてよかったと感じている。カウンターの私のスペースは狭く、左右の人と文字通り肩を寄せ合いながら呑む酒が、なぜか思った以上に美味いのだ。好きな酒とおつまみ、そして店に充満したエネルギーによって、私の心と身体はすっかり充電が満たされたように感じた。
これが酒場のチカラ、これが酒場の存在する理由なのかもしれない。

店名/晩杯屋 新宿東口店
住所/東京都新宿区新宿3-21-4 第2サンパークビル 1F
電話/03-6380-4110
営業時間/11:00 – 23:00
定休日/不定休

※本記事は筆者訪問日(2024年10月)時点の情報をもとに作成しています。
※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があります。
※飲酒は20歳になってから。お酒は楽しく適量で。