【上野「もつ焼き 大統領(本店)」】避けては通れない上野の最重要店。

大衆酒場・居酒屋

王道とか中心とかメインストリームって、やっぱり強いよな、なんて思う。なにか新しいことをはじめるとき、新しい場所へ行くとき、とりあえず試されるのは王道から。新しいジャンルの音楽を聴くならそのジャンルを代表するアーティストがまず聴かれるだろうし、東京で観光するなら浅草・浅草寺や東京スカイツリーあたりが真っ先に想起されるだろう。反対に、王道を通らずに派生や亜流ばかりに触れているとしたら、それはモグリと呼ばれても仕方のない状態だと言える。王道は強し。東京を代表する酒場が集結する上野界隈、そのなかで王道と呼べる店といえば、ここ「大統領」だ。

創業は昭和25年、上野アメ横の名物・大統領(本店)。

多くの人が行き交う上野アメ横。そのなかでも特に雑多でカオスで活気に満ちた高架下に、もつ焼きの名店・大統領はある。昭和25年創業、戦後闇市の風情を色濃く残す佇まい。店内にはこじんまりとしたカウンター席、そして屋台の風景そのままに店前に並べられたテーブル席。決して広くはないが、そのサイズ感がなんとも言えない非日常感を醸し出している。飲兵衛の聖地・上野だけに、営業は午前10時から。そしてオープン直後から、店内はお客さんでごった返している。上野といえば大統領、こう呼んで差し支えないだろう。ちなみにここから歩いて1分足らずの場所には、2階建でお座敷も備えた大箱の支店がある。

煮込み、もつ焼き、名店の味に舌つづみ。

いつも混んでいる大統領に運良く入れたのなら、第一声は「ビールと煮込み」で間違いないだろう。この日は生ビールの気分だったけど、より風情を求めたいなら瓶ビールをチョイスするのも良い。

すかさずやってきた名物の煮込み。界隈では珍しい、馬モツを使用しているとのこと。いわゆる居酒屋のもつ煮込みよりも弾力があり、独特の風味が感じられるかもしれない。この味わいがビールをあっという間に奪っていく。

続いてモツ焼き。カシラを塩で、シロをタレで。しっかりとした噛みごたえのカシラは、肉を喰らっている自分を強く自覚させてくれる。対象的に柔らかく甘辛いシロとの相性もよろしいようで。

ふと思い立って、かなりのダメモトで店員の方に「アブラあります?」と聞いてみた。答えはまさかの「あるよ」。ちょっとクラクラしながら「じゃあアブラをタレで」とオーダーする。大統領には何度も来ているが、人気メニューなのだろう、入荷が少ないのかもしれない、アブラに出会う機会は一度もなかったのだ。ほどなくやってきたツヤツヤのアブラ。この味に出会えて本当に幸せだった。

王道の店には、王道たる理由がしっかりとある。

安くてうまい。歴史と風情。並の店ではちょっと太刀打ちできない魅力が、大統領にはつまっている。長年通い詰めている常連も多いと聞く。何十年にもわたり、彼らにうまい酒と料理を提供し続けてきたことによって、そして想像を絶する努力や苦労によって、大統領は王道へと上り詰めたのだろう。この先も変わらずに、この味と風情を楽しみ続けられることを切に願う。

 

店名/大統領(本店)
住所/東京都台東区上野6-10-14
電話/03-3832-5622
営業時間/10:00~24:00
定休日/年中無休

※本記事は筆者訪問日(2021年3月)時点の情報をもとに作成しています。
※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があります。
※充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。