【ハクレイ酒造「白嶺」】甘みとキレ、フレッシュな新酒を味わう

家で楽しむ

プロが厳選した日本酒が毎月届く「saketaku」に登録して数週間、はじめてのお酒が2本、手元に届いた。盆と正月とクリスマスが一度にやってきたようなワクワク感を覚えながら開封。今回のお酒はどちらも京都のお酒で「白嶺」と「久美の浦」であった。日本酒初心者の私にとっては、もちろんこれまでに目にしたことのないお酒。なるほど、これは誰かに勧めてもらわなかったら、生涯出会うことのなかったお酒かもしれない。同封されていた鑑定書を読み解きながら「白嶺」の方から呑んでみたいと思う。

甘みと酸味のバランスに秀でた新酒「白嶺 純米酒」。

ブルーの瓶がひときわ美しい「白嶺」は、京都府宮津市のハクレイ酒造による純米酒。昨年末(2023年)に絞られたばかりで、新酒ならではの、まるで微炭酸のようなピリピリとした刺激が楽しめる。製造元であるハクレイ酒造にほど近い日本海の海の幸との相性が良く、それでいて普段着で楽しめるお酒のようだ。多くの日本人と同じく、海の幸には目がない私にとって期待せずにはいられないお酒なのだ。

海と山の恵みで酒造りを伝える「ハクレイ酒造」。

どうせお酒を楽しむのだから、心血を注いでそれを生み出した酒蔵のことも合わせて知っておきたい。ということでハクレイ酒造さんのホームページを覗いてみた。

ハクレイ酒造の創業は天保3年(1832年)、日本三景である「天橋立」にほど近い京都府宮津市の丹後由良に位置する酒蔵。目の前に日本海、後ろには大江山連峰由良ヶ岳、海と山にはさまれ、かつて百人一首にうたわれるほど風光明媚な場所で、自然豊かな地元の素材を酒造りに活かしている。

米と水と人との調和を大切にした酒造りを徹底しており、米は栽培からこだわり、水は蔵の目の前の大江山連峰に属する丹後富士「由良ヶ岳」中腹に流れ出る「不動山水」を使用。これは超軟水の水質でありながら甘口酒、辛口酒とも自在に醸すことのできる不思議な水で、この水の力が「白嶺」はもちろん、合わせて製造されている「酒呑童子」の原点となっているのだそう。

これらこだわりの材料を使い、創業当時から受け継がれてきた伝統的な製造方法を用いて「白嶺」は造られている。

新酒のフレッシュな口当たり、甘みとキレを感じる味わい。

ワクワクする気持ちを抑えながら、大切に封を開け、まずは香りを楽しんでみる。リンゴやマスカットを感じさせる、やや酸味の強いフレッシュな香りが広がっている。

写真では分かりづらいが、色は無色透明のように見える。底に蛇の目模様の描かれたぐい呑みがほしくなった(たぶんすぐに買う)。

ひとくち含むと、木樽の名残か、まずは香ばしさを感じることができた。そして新酒特有と言われる、微炭酸のようなピリピリとした刺激や荒さのある口当たり。甘みがありながら同時にキレの良さも感じられ、これは確かに海鮮をお供に呑んだら素晴らしいだろうなと思えた。うまい。

この日のアテは残念ながら海鮮ではなく、豚バラ肉と白菜でシンプルに作った鍋だったのだが「白嶺」の爽やかな味わいは、肉と野菜の鍋の味もしっかりと引き立ててくれた。

日本酒を通じて、新しい出会いを。

「saketaku」で味わった最初のお酒「白嶺」。初回から非常に満足度の高い出会いを果たすことができた。私がこれまでに訪れたことのない京都府の日本海側という、漠然としたイメージすら持てていなかった地域についても、酒蔵を通して知ることができた。山を背負い海を見晴らす素晴らしい景観、いつかこの目で眺めてみたいと思った。

そしてハクレイ酒造さんのホームページを見ていて、ひとつ学びにつながった文言があったので、失礼ながら文章をそのまま拝借した。

酒蔵というものは元々、地域コミュニティの核となる存在でした。
半径2kmの地域の人にお酒を買ってもらって、
その収益を地域に還元や、文化の育成に使っていました。
地域の小学校や郵便局を立てる
地域の書道家、書家、画家など文化人の援助・育成をする
地域に相撲や能・狂言の興行を呼んで地域の人を無料で招待する
酒税で戦費をまかなっていた(日露戦争時には戦費の半分を酒税でまかなっていた)
ハクレイ酒造でも、8代目のころには、地域の小学校や郵便局を寄贈して建てていました。
酒造業は、もともとは営利だけではなかったのです。
酒蔵は、地域の人々に尊敬され敬われる存在で、
地域のお金の循環を大きく担っていました。

各地域に点在する酒蔵も、神社のように日本人の暮らしにとってなくてはならない、生活に溶け込んだものだったのだと知ることができた。

日本酒との出会いは、酒を知り、酒蔵を知り、地域を知り、文化や歴史を知ることにつながっていくのかもしれない。

〈酒名〉白嶺 純米酒
〈都道府県〉京都府
〈酒蔵〉ハクレイ酒造株式会社
〈酒蔵HP〉https://www.hakurei.co.jp

アルコール度:15度
日本酒度:±0
酸度:1.6
アミノ酸度:1.0
原料米:祝
精米歩合:70%
酵母:K-1801
搾り時期:2023年12月
粕歩合:33%
火入れ:1回
貯蔵方法:瓶貯蔵
貯蔵温度:8〜10度
種麹:菱大No430
仕込み水:伏流水
仕込み水硬度:11.9